長野県売木村診療所視察(D to P with N)

令和5年(2023年)5月長野県内D to P with Nの先行事例、売木村診療所を視察して参りました。

こちらで視察の報告を共有します。

売木村診療所 オンライン診療活用で無医村回避

売木村

長野県南端エリア

人口500人ほど

県立阿南病院より20km(車で30分)

県立阿南病院

65床

使命:へき地医療

県内最南端の病院(飯田インターチェンジから約30km車で40分の距離)

背景

売木村国保直営診療所の令和3年3月常勤医師退職に伴い、「無医村」の危機に直面

県立阿南病院より診療支援を受けることで村の医療を維持

当初週1回半日対面診療のみ 

→「診療日を増やしてほしい」という要望

→令和4年5月オンライン診療を導入し週2回半日診療に

オンライン診療の様子

  • 対象患者: 病状が安定している再診患者のみ
  • 診療サポート体制:診療時間中は村が雇用する事務員と看護師が常駐
  • デバイス操作:全てスタッフが実施。患者は操作不要
  • 診療補助: 看護師血圧測定など診療補助行為を実施
  • 通信環境: 専用回線を使用し、高いセキュリティと安定性を確保
  • 機器とシステム:
    • マイクはヤマハ製
    • カメラは高品質の取り外し可能なWebカメラ
    • 診療には専用のオンライン診療システム(トリニティケアクラウド)を活用
  • 電子カルテ: 村は電子カルテ導入済み(病院電子カルテとは別)
  • 処方:院内処方
  • 診療報酬:村が受け取り
  • 委託費:村が県立病院に支払い

診療所診察室

患者は対面診療と同じ椅子に座る

看護師は医師が操作する電子カルテ画面を見ながら対応

モニター越しに医師とビデオ通話

モニター上部に着脱できるウェブカメラ

会議用マイクが優秀

県立阿南病院オンライン診療室

診療所の電子カルテ・カメラ画像をそれぞれのモニターで確認

診療所電子カルテは院内で操作可能

医師の移動負担大きく軽減

オンライン診療での工夫

オンライン診療は、現地スタッフがサポートを行うことで、スムーズに診療が行われていました。

事務員さん看護師さんは、患者さんのわずかな変化も拾い上げ医師に伝えます。

顔馴染みのスタッフがいるので、患者さんも安心した様子でした。

ウェブカメラの活用

お薬手帳をカメラにかざしたり、患部にwebカメラを近づけたり

対面診療に近い医療が提供されています

機器操作工数を最小限にする工夫や会議マイクの性能の高さ、着脱可能カメラの有用性、など実感できました。

感想・デメリット

患者の声

診療回数が増えてありがたい

対面診療と変わりない

看護師がそばにいるので安心

変化があれば対面診療も受けられるので不安はない

医師の声

対面診療の混雑緩和につながっている

移動による負担がなくて済む

医師不足解消につながるのではないか

デメリット

機器の整備が必要

セキュリティの不安

対面より低い診療報酬

対面診療より情報が少ない

地域医療の未来をつなぐ取り組み

昨今、各地域が自前で医療を維持することが難しくなっています。

全国の地方において、限りある医療資源を有効に再分配する必要性が年々増しています。

売木村診療所の取り組みは、無医村回避の解決策として全国的にもっともっと注目されるべき取り組みです。

全国他地域でも実現可能性が高い、再現性のあるモデルと感じました。

診療所・病院の皆様、ありがとうございました。

また、この取り組みについて第1回長野県オンライン診療研究会でご発表いただきました。

ダイジェスト動画(Youtube)

余談

オンライン診察を担当していたのは以前一緒に働いた後輩ドクターでした。

数年ぶりに後輩たちとランチを食べることができました。

また一緒にスキーに行きたいものです。

文責:今井