伊那モバイルクリニック視察

令和5年(2023年)5月、長野県伊那市の伊那モバイルクリニックを視察いたしました。

こちらで視察の報告を共有します。

概要

長野県伊那市

  • 長野県内8番目の人口(6.4万人)
  • 長野県内自治体3番目の面積
  • 中山間地域が多い
  • 医療機関が市中心部に集積
  • 周辺地域では通院・往診負担大きい

伊那市は面積が広く、医療資源の有効活用に迫られています。

そこで伊那市はデジタル田園都市国家構想交付金に名乗りをあげ、

先駆けてモバイルクリニック事業に着手されました。

伊那モバイルクリニック

  • 実施主体は伊那市
  • デジタル田園都市国家構想交付金を活用
  • 看護師と運転手が乗車して患者の元へ
  • 約10箇所の医療機関が共同利用
  • 看護師は各医療機関所属
  • 看護師サポート下にオンライン診療
  • 妊産婦健診も
  • 実績:内科利用がメイン(年間100−200件)

モバイルマタニティクリニック

  • 妊産婦健診
  • 兄弟がいてもOK
  • 大きなお腹を抱えての受診負担軽減
  • 産後の受診負担軽減
  • 車内ベッドに寝て診察を受けられる
  • 看護師(助産師)による超音波検査が可能

視察の流れ

視察当日はあいにくの雨でした。

  • 当日車両を利用するクリニック集合
  • クリニックでオンライン診療担当ドクターにご挨拶
  • 車両がクリニックに到着
  • クリニック看護師が乗車し、患者宅へ出発
  • 同日視察の皆様と意見交換
  • 医師のオンライン診療に陪席
  • 診察後ドクターと意見交換
  • モバイルクリニック車両と看護師が帰院
  • 車両視察

車両の様子

車両への乗り込み
可動式ステップと手すりで楽々です。

室内前方の様子
補助シートに看護師が座ってサポート
診察補助デバイスが鎮座
車両右側には診察台が鎮座
室内はLEDライトで明るい

室内後方の様子
オンライン診察用モニターが車体左側に鎮座
バックゲートには車椅子用リフト
エアコンは車両のものを使用(要エンジン稼働)

診察補助

モバイル超音波
遠隔聴診器
バイタル共有システム

デバイス接続
それぞれのデバイスが高度に連携


オンライン診療の様子

  • 対象患者: 病状が安定している再診患者
  • オンライン診療:同乗する看護師がサポート
  • デバイス操作:全てスタッフが実施。患者は操作不要
  • 診療補助: 血圧測定など診療補助行為を看護師が実施
  • 処方:基本的に院外処方
  • 診療報酬:各医療機関が請求・受け取り

オンライン診療での工夫

  • ドクターは電子カルテを利用
  • 遠隔で聴診も実施
  • 画面越しに患者自宅の様子もみてとれる
  • 看護師が医師と患者の間に立ち”通訳”

遠隔聴診器の活用

看護師が遠隔聴診器を患者の胸に当てまる

医師はヘッドホンを通じて心音・呼吸音を診察室で判定

医師が「もうちょっと上、もうちょっと左側」と現場看護師に指示

感想・課題

患者の声

自宅に来てもらえてありがたい

青い車が希望を運んできてくれる

伊那市に住んでいてよかった

医師の声

患者が自宅で過ごせる時間が増える

医師移動時間の節約になる

課題

  • 車両導入のコスト
  • 年間維持費
  • 医療機関の看護師を一人割く必要性
  • 看護師によるデバイス操作の手間
  • 看護師が検査をしても点数がつかない
  • 車椅子リフトはほぼ使用しない
  • ベッドがスペースをとる(マタニティ健診では必要)
  • 支払い・お薬受け取りまでの手続き

国内1例目として

モバイルクリニック事業は全国的に増えており、2024年時点で20箇所以上となっています。

伊那モバイルクリニックは国内第1例目であり、長野県からこの取り組みがスタートしたことに意義を感じます。

この規模の自治体で実証が証明されてこそ、再現性をもって全国に展開可能となります。

本取り組みを通じて、運用フローや車両設備要否の経験値が蓄積されています。この知見をもって伊那市の車両はさらにアップデートされ、後発MaaS車両はより洗練されていきます。

またモバイルクリニックの課題も浮き彫りになりますので、この結果をぜひ国にもフィードバックしていただきたいです。

オンライン診療が制度上の想定にないため、行った診療行為を保険請求できない現実があります。早急に柔軟な制度整備を望みます。

一緒に視察した長野県看護大学の皆様とも意見交換することができ、大変貴重な機会になりました。

ご案内いただいた伊那市の皆様、医療機関の皆様、ありがとうございました。

また、伊那市の皆様には本事業について第2回長野県オンライン診療研究会でご発表いただきました。

さらに今後の展開も見据えられており、大変刺激になります。ありがとうございました。

ダイジェスト動画(Youtube)

余談

視察対応いただいたクリニック様の往診車

伊那市MaaS車両に合わせて、鮮やかなブルーをチョイスされたとのことです。

デジタルでスマートな印象のブールはよく映えますね。

文責:今井